たった2ページの雑誌記事が心に突き刺さる。猪瀬直樹さんによる「いまどきの編集者、ライターの働き方」論。

雑誌「編集会議 2012夏号」”古典 = 自分が生まれる前の作品”

2012年5月に買った雑誌「編集会議 2012夏号」。この中の、2ページのインパクトが強烈だ。

本誌は『いまどきの編集者、ライターの働き方』がテーマで、十数人の業界人がそれについて考察している。その中のひとつ、作家であり、東京都副知事でもある、猪瀬直樹(いのせなおき)さんの記事にハッとさせられ、3ヶ月経った今もずっと意識から外れない。

150年単位の近代史を理解する必要がある。

今の日本人は、65年あまりの戦後史だけで、20世紀前半の歴史が抜け落ちていると猪瀬さんはいいます。たしかに言われてみればその通り。自分は最近NHK朝の連ドラをよく見ているのだが、太平洋戦争末期から戦後復興を時代背景にしている作品が続いている。他にも、大ヒットした日本映画「Always 三丁目の夕日」シリーズも、終戦から10数年後の復興時代、昭和30年代の東京下町が描かれている。

どちらも面白い!敗戦国が世界第二位の経済大国になった歴史というのは、痛快だし、夢や勇気ももらえる。そしてなにより、身近だ。

しかし、海外のジャーナリスト、ライター、ビジネスマン達は、『20世紀とは何だったのか』を良く理解しているんだそうだ。戦争を繰り返してしまったこと。2度とあのような戦争はすまいと100年近く前に締結された条約が今につながっていること。

猪瀬さんは、『100〜150年単位の歴史を深堀して、はじめて次の100年をどうすべきが考える事が出来る』と主張する。また、『日本人は、黒船来航から約150年の歴史が自分につながっていることを理解する必要がある』とも提言している。

映画、小説、ドラマでは、幕末や太平洋戦争(大東亜戦争)時代の物語が描かれることが多く、確かに明治維新から現代までをひとつの流れとしてとらえている意識は薄いかもしれない。

さらに猪瀬さんはこう断言する。
『今の日本人は、90年代と00年代の違いなど世代論ばかり。10年程度の違いは実感にしか過ぎない。歴史意識があってこそ、自分の刹那が生まれる。歴史意識がなくては、ジャーナリズムや文学は生まれない』 。

猪瀬直樹氏の深みに感銘

ここまでで、2ページ記事のたった3分の1。続いて、冒頭に書いた「古典とは、自分が生まれる前に出た作品のこと」などをトピックに、『いまどきの編集者、ライターの働き方』について明らかにしてゆく。

いちぶん、いちぶんが、名言のように深い。

続きは、ぜひ本誌を読んで頂きたい。

編集会議:150年単位の歴史意識がなければ書くことはでいない(猪瀬直樹)

黒船来航からの日本史年表

猪瀬さんの言葉に共感し、これを機会に約150年間を振り返ってみた。本文より長くなってしまったが、これは歴史のほんの一部。

鎖国ニッポンが、外国に戦争を仕掛け、国土を遥かに超える領土を占領していた時代もあった。そんな日本が、第二次世界大戦で大敗し、アメリカに占領されてしまう。独立したのは1952年。今から60年前のことだ。

尖閣諸島、竹島、北方領土といった領土問題も、歴史を知れば見え方も広がって来るに違いない。また、自分たちの家族や属する業界の将来を案ずるにおいても、直近の過去を参考にしているだけでは、きっと遠くまでは見通せないだろう。

こうやって振り返ってみると、猪瀬氏がいうように、10年スパンで未来を考えるのは確かに浅はかと言えよう。

 

<日本近代史>

  • 1853年(嘉永6年)- ペリー率いるアメリカ海軍が来航。日本が、攘夷か開国に揺れる。
  • 1868年(明治元年)- 江戸城が明け渡され、260年あまり続いた徳川幕府が滅ぶ。
  • 1871年(明治4年)- 廃藩置県。藩が廃止され、3府(東京・大阪・京都)302県に。
  • 1873年(明治5年)- 徴兵告諭制定により、満20歳の男子に兵役義務。
  • 1883年(明治16年)- 東京日比谷に鹿鳴館が建設。外交のための社交場。
  • 1886年(明治19年)- 小学校令交付。3年または4年間の義務教育が定められる。
  • 1889年(明治22年)- 大日本帝国憲法発布。
  • 1890年(明治23年)- 第1回衆議院議員選挙。高納税者(総人口の約1%)の男子に選挙権。
  • 1897年(明治27年)- 日清戦争勃発。朝鮮半島をめぐって清(今の中国)と戦争。
  • 1898年(明治28年)- 日本が勝利し「下関条約」が結ばれる。中国・朝鮮に支配力を強めてゆく日本に対し、ロシア、ドイツ、フランスが反発。
  • 1904年(明治37年)- 日露戦争勃発。日本がロシアに宣戦布告。
  • 1095年(明治38年)- 日本海海戦勝利(東郷平八郎が率いる艦隊が、ロシア帝国海軍バルチック艦隊撃破)を機に、アメリアの斡旋のもと「日露講和条約」締結。
  • 1911年(大正元年)- 明治天皇が崩御され、皇太子が新天皇に。年号が大正に改められた。
  • 1914年(大正3年)- 第一次世界対戦勃発。ヨーロッパ東西部バルカン半島が起点。同年、日英同盟によりイギリスから要請を受け日本も参戦。日本軍はドイツの支配地域である中国の青島、南洋諸島を攻撃。
  • 1915年(大正4年)- 日本が中国に対し「二十一か条要求」。
  • 1923年(大正12年)- 関東大震災が発生。死者・行方不明者はおよそ105,000人。
  • 1925年(大正14年)- 普通選挙法成立。25歳以上の男子すべてに選挙権。
  • 1926年(昭和元年)- 大正天皇が崩御され、裕仁親王が新天皇に即位。年号が昭和に改元。
  • 1929年(昭和4年)- 世界大恐慌。はじまりはアメリカのニューヨーク。
  • 1931年(昭和6年)- 柳条湖事件(満州事変)勃発。日本が中国に戦争を仕掛け、約5ヶ月で満州全土を占領。
  • 1932年(昭和7年)- 中国東北部に満州国建国。(面積は今の日本の約3倍、人口はおよそ4,000万人)
  • 1937年(昭和12年)- 日中戦争勃発
  • 1938年(昭和13年)- 国家総動員法制定。戦争遂行のために政府が人、物資など自由に動かせる。軍国主義に。
  • 1939年(昭和14年)- 第二次世界大戦勃発
  • 1940年(昭和15年)- 日独伊三国同盟(日本・ドイツ・イタリア)成立。軍人である東条英機が内閣総理大臣に就任。軍事国家に。
  • 1941年(昭和16年)- 日本軍による、ハワイ真珠湾攻撃。太平洋戦争に発展
  • 1942年(昭和17年)- 日本軍がミッドウェー海戦でアメリカ軍に大敗。
  • 1943年(昭和18年)- 学徒出陣。
  • 1944年(昭和19年)- 中国でも日本敗退。
  • 1945年(昭和20年)- アメリカ軍による、硫黄島玉砕、東京大空襲、広島・長崎原爆投下など。日本国軍が、無条件降伏。
  • 1946年(昭和21年)- 戦後初の総選挙。前年に成立した婦人参政権に基づき、男女20歳以上の者に選挙権を与えられた。
  • 1947年(昭和22年)- 教育基本法公布。小学校6年間、中学校3年間の義務教育となる。
  • 1950年(昭和25年)- 朝鮮戦争勃発。アメリカ軍が大韓民国(韓国)を支援。アメリカが日本に、武器の修理や弾薬の補給・製造などを依頼し、日本は皮肉にも特需で経済発展。
  • 1951年(昭和26年)- サンフランシスコ平和条約に調印。日本は世界48カ国と平和を約束。同年、アメリカとも日米安全保障条約を結ぶ。
  • 1952年(昭和27年)- サンフランシスコ平和条約調印。日本をアメリカ連合国の戦争が終結。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の占領から解放され、日本が独立
  • 1956年(昭和31年)- 日ソ共同宣言に調印。ソビエト連邦(ロシア)との国交が回復。
  • 1972年(昭和47年)- 沖縄が、アメリカ合衆国より日本に返還。同年、日中共同声明。中国との国交が回復。
  • 1978年(昭和53年)- 日中平和友好条約調印。
  • 1986年(昭和61年)- 男女雇用機会均等法が執行。採用に男女差禁止。名称も、保母は保育師、看護婦は看護士、スチュワーデスは客室乗務員などに改められた。
  • 1989年(平成元年)- 昭和天皇が崩御され、今上天皇が即位。平成に改元された。
  • 1991年(平成3年)- バブル経済が崩壊。
  • 1995年(平成7年)- 阪神淡路大震災が発生。死者・行方不明者はおよそ6,500人。
  • 2011年(平成23年)- 東日本大震災が発生。死者・行方不明者はおそよ19,000人。

 

 

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本誌「編集会議」は、月刊誌「広報会議」からの不定期で発刊される別冊誌。2012年夏号は、すでに発売から3ヶ月経ち、書店ではあまり見かけなくなりました。バックナンバーになる前にネットでのご購入がおすすめです(Amazon、楽天ともに送料無料)。ちなみに、次号は「編集会議 2012年秋号」で、9月中の発売とのことです。


<最後にひとこと>
テレビ、雑誌、インターネットなどから、ふいに凄く気になる方に巡り会うことがあります。猪瀬直樹さんの事は、これまであまり良く知りませんでした。1946年長野市生まれの、作家、政治家。オフィシャルサイト、ブログ、Twitter、メルマガまであり、オンライン・オフラインとも、常に情報発信をしつづけているようです。

今、自分は、おちまさとさん、小宮一慶さん、高城剛さんが、特に気になる存在です。これからは猪瀬直樹さんの言葉にも注目して、学ばせて頂きたいと思います。雑誌からの突然の出会いに感謝。