ハッと心をわしづかみにされた。はじめて歩いた道で。
カフェキングストン。
昭和純喫茶の佇まいに、あじわいあるカタカナフォントの看板が良い。
キングストンは、カリブに浮かぶ島「ジャマイカ」の首都名。レゲエ好きのボクにとっては、特別な意味を持つ都市の名だ。地名にグラッとさせられる事は、皆さんにもきっとあるだろう。
とにかく「カフェキングストン」を横目に、心惹かれながら先を急いだ。
行き先はその2,3軒ほど隣にあるドトール。ドトールに何の罪もないが、とても寂しい気持ちでガラスの自動扉をくぐる事となった。小さいテーブルに男二人が窮屈に座って、小さくMacBookを開きながら打ち合せだ。
手早く2,3案件を決め込み、パソコンを閉じる。次に向かったのは某IT企業。
会議室で賑やかに6人で企画会議を行った。フリーランスのボクにとっては、会議は新鮮で楽しい。イキイキと話す人、聞く事に徹する人、突然鋭く切り込む人、ボケ担当など、繰り広げられる人間模様が楽しい。
よし終了!
こうして、忘れられなかった念願の「カフェキングストン」に辿り着いたのだ。
店内は特にジャマイカとは関係が無く、多少ガッカリはしたのだが、期待通りの純喫茶的店内と、期待以上のエスプレッソマシンに驚愕した。
コンビニの惹きたてコーヒーも美味しいと人気だが、たかだか一杯のコーヒーを入れるのに、この凄いマシンは何なんだ!大友克洋のアニメ映画「スチームボーイ」に出て来そうな様相だ。
店内には、音楽はない。
あるのは無骨な親父が、巨大なエスプレッソマシン相手に、小さなエスプレッソ用コーヒーカップに抽出する姿だけだ。プシューという音と蒸気が気持ちを高ぶらせてくれる。
カフェキングストンへは3人で訪れたのだが、出て来るのは一杯ずつ。丁寧に淹れた珈琲は、まるで上質なカクテルのように感じる。
無骨な親父。
そして、テーブルへ運んでくれるのは奥さんだろうか。
最後の1杯とともに「お待たせしました」と、優しく声を掛けてくれた。
珈琲を味わいたければムードが大切だ。
せわしなく人が飛び交う都会で、埋もれずに佇み続ける。
人は雰囲気に惹かれるということを、ハッと思い出させてくれた。
カフェキングストン
東京都千代田区麹町1-8-6
地下鉄「半蔵門駅」4番出口徒歩1分
どうして、あの人にうっとりしてしまうのか。
なぜ、あの街は魅惑的なのか。
人の気配がない夜道が怖い理由は?
天気のよい日に公園を歩くとアイデアが沸いて来る!
ムード(雰囲気、空気)は目に見えません。しかし、人を動かす大きなチカラなっているのは確かな事。日々忙しくしているとムードなんて忘れがちですが、大切にしたいキーワードですね。