先日、「フルパワー(ほぼ不眠不休)で仕事に打ち込めるのは、35〜40歳くらいまで……と実感」なんて弱腰な記事を書いてしまったところ、画家の狩集さんから「ぜんぜんいけるで。なめとったらくだらん人生なるで」と一喝!
42歳ごときで、俺は何てつまらんことを言っているんだ……と、ハッとさせられました。狩集さん、すいません。ありがとうございました!
根性論は古い! 第3世代のメンタルトレーニング「マインドフルネス」で、リラックスと集中
僕は、TBSラジオ「荻上チキ セッション22」というラジオ番組のファンでよく聴いているのですが、その番組内に予防医学研究者の石川善樹さんが招かれ、「疲れない脳を作る生活習慣」をテーマに、全4回のトークが放送されました。
- 第1回:次世代のメンタルトレーニング「マインドフルネス」
- 第2回:心を休める睡眠と脳を休める睡眠
- 第3回:血糖値を制するものは仕事を制する
- 第4回:ゾーンに入る3つのステップ
■関連リンク
疲れない脳を作る生活習慣 (2016年4月):WISDOM Square(荻上チキ Session-22)
ザッと言えば、「なぜ脳は疲れるのか? どうすれば、より集中できるのか」といったお話です。
これは、まさに僕が望んでいること。岸和田だんじり祭に参加していた頃のような「体力」ではなく、欲しいのは「集中力」と冴えきったアタマ。「疲れ知らずの脳」こそが、仕事をして行く上で渇望している能力です。
この番組の前半で、脳を疲れにくくするためには第3世代のメンタルトレーニング「マインドフルネス」を生活習慣に取り入れると良い、と解説されています。
マインドフルネスとは、一体どんなメンタルトレーニングなのか?
まず、第1世代のメンタルトレーニングは「根性」。長い時間一生懸命頑張る。たくさん競争すれば強くなる。とにかく、やれ! といった精神論です。これは、燃え尽きてしまう、怪我をしやすい、疲れやすい、身体が持たないなどの弊害があり、廃れて行きました。
次に登場したのが、第2世代のメンタルトレーニング「スポーツ科学」。これは、ポジティブに考えよう、夢を大きく持とう、と言ったように「考え方を変える」ということ。しかし、人の考え方なんて変わらないとわかりました。例えば、サッカー日本代表のプレイを見て、「よっしゃ、自分もがんばるぞ!」と思っても、翌日は頑張れず、持続できないのだそうです。その瞬間は気持ちいいけど、それは脳がつくった幻想である、ということです。
そして、近年注目されているのが、第3世代のメンタルトレーニング「マインドフルネス」。考え方ではなく、注意をどこに向けるのかをトレーニングすることにより、苦痛を無くしたり、リラックスして集中できたりするそうです。
そういえば、根性って最近聞きませんね。1980年代までは、まだ根性論が信じられていました。修学旅行先の土産物屋には「根性」と書かれた置物が売っていたり、ど根性ガエルというアニメがひんぱんに再放送されていたり。また、クラブ活動中も、「水を飲むな! 根性だ!」と、先輩から厳しく言われました。今となっては、ずいぶん古くさいですね。熱中症対策が言われだしたのも、ここ20年くらいです。
そんな新時代の「メンタルトレーニング」を解説する石川善樹さんのお話がとても興味深かったので、もっと詳しく知りたいと思い、著書を購入しました。
疲れない脳をつくる生活習慣[Kindle版] | ||||
|
人間が一日に使える意思決定の量は限られている。もし使い果たすと……?
そ、そうなんですか! まず、本書の冒頭で、「人間が一日に使える意思決定の量は限られている」と書かれています。この考えは20世紀の心理学者が発見したそうで、心理学や脳科学に興味がある方にとっては、基本中の基本なのでしょう。しかし、知らなかった僕にとっては衝撃の事実。
具体的には朝起きて、「何食べよう」「どの服を着よう」「友達からのLINEに返信しないと」……などをしているうちに、限りある意思決定の量がすり減ってしまうというのです。ゲームの体力・魔力などのゲージが徐々に減って行くようなイメージでしょうか。
そして、もし一日の意思決定を使い果たすとどうなるのか? 理性ではなく欲望がわたしたちを支配し、イライラしたり、相手にきつくあたったり、暴飲暴食したりしてしまうそうです。冷静な判断(意思決定)ができなくなってしまう、ということですね。
そういえば、Apple社の前CEO、故スティーブ・ジョブズ氏は、プレゼンテーション時はいつも同じ服を着ていていると注目されました。無地のタートルネックのネックと、シンプルなジーンズです。そのノームコア(究極の普通)なファッションはイメージ戦略のひとつかもしれませんが、意思決定の量をすり減らさないための知恵であったのかもしれません。
また、ジョブズ氏は、禅や瞑想を生活習慣に取り入れいたこともよく知られています。まさに、これはマインドフルネス。最高のパフォーマンスを出すために、早くから今注目されつつある次世代のメンタルトレーニングを取り入れていたのですね!
ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ | ||||
|
マインドフルネスで大切なのは、姿勢と呼吸。坂本龍馬がお手本
マインドフルネスの基本的な取り組みとしては、まず、姿勢を正して、息をゆっくり吐く。姿勢が悪いと肺が圧迫されて呼吸が浅くなるので、とにかく背筋を伸ばすのが重要。呼吸する際は、鼻から5秒くらいかけて息を吸い、その後、鼻でも口でもどちらでも良いので10〜15秒をかけてゆっくりと息を吐く。これだけで、とてもリラックスするのだそうです。
気持ちを落ち着けようと深呼吸する際、つい吸う方を頑張りがちですが、実はそれは逆効果。呼吸は、吸うと緊張して、吐くとリラックスするので、吐くことが大切ということです。なるほど!
本書を読んでいて、個人的に印象深かったのが、坂本龍馬の話。薩長同盟でも亀山社中でもありません。注目すべきは龍馬の座り方。背筋がスッと伸びたその座る姿勢は、まさに座り方のお手本なんだそうです。脳に良いだけでなく、堂々としているように見えて一石二鳥。
これはぜひ真似したいですね。座り方は、坂本龍馬スタイルで!
ワクワク目覚めて、満ち足りた気持ちで眠りにつこう
本書では、脳を疲れにくくするための生活習慣テクニックが、他にも数多く紹介されています。睡眠は7時間が理想的であるとか、血糖値を一定に保つために食事の間隔を狭くするなど。
マインドフルネスは、エナジードリンクを飲んで瞬間的なパフォーマンスを上げるやり方ではありません。永続的な生活習慣です。本書には、マインドフルネスな状態とは「朝ワクワクして目覚めて、夜満ち足りた気持ちで眠りにつくこと」と、書かれています。
最近、頭が疲れやすい、集中力がない。そう感じている方にオススメです。専門用語も少なく、気軽にサクサク読めるので、ぜひ手に取ってみてください。
ところで、本書の表紙デザインは「ネコ」ですが、これはなぜネコ何でしょうか? 猫背はよくない……とチラッと出てきたくらいで、特にネコについての話はありません。……謎。(笑)
【著者】石川善樹(いしかわ・よしき)
予防医学研究者 1981年、広島県生まれ。世田谷学園中学校、筑波大学附属駒場高校、東京大学医学部健康科学・看護学科卒業。ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程を経て、自治医科大学で博士号取得。
「人がより良く生きるとは何か」をテーマとした学際的研究に従事。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、ソーシャルマーケティング、計算社会科学等。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。
著書に『疲れない脳をつくる生活習慣(プレジデント)』『最後のダイエット(マガジンハウス)』、『友だちの数で寿命はきまる(マガジンハウス)』など。