インターネットで海外から音楽や電子書籍を購入した場合は消費税が課税されないので、「海外からのデジタル販売に対しても課税されるようにしよう!」と、政府が税制改正を行なうとニュースになっています。
大和総研の米川誠主任コンサルタントによれば、海外から日本の個人や企業向けへのネット経由のデジタル配信額は12年で5119億円。単純計算で約256億円の消費税を取り損ねたことになる。
海外ネット配信にも消費税 「抜け穴」に国内企業から不満の声 – SankeiBiz(サンケイビズ)より一部引用
これに対して、Amazon、楽天の反応は?
この税制改正は、来年度平成27年(2015年)の改正を目指し進めて行くとのこと。これに対して、ネット販売を行なう業者として「Amazon」と「楽天」のコメントがNHKニュースに掲載されていました。
<Amazonのコメント>
インターネットで電子書籍を販売しているアメリカのIT企業「アマゾン」の日本法人は、「弊社は日本の法令などに基づき適切な納税をしていますが、今回の議論についてのコメントは控えさせていただきます」としています。
NHKニュース「海外企業のネット配信 消費税義務づける案」より一部引用。
適切な納税をしているのに、なぜコメントを控えるのでしょうか? Amazonのヘルプページを見てみました。
日本向けのAmazon.co.jpにラインナップされているMP3ストアより、国内盤ではない洋楽を見てみると「販売:Amazon.com Int’l Sales, Inc.」と書かれています。日本のAmazonですが、一部音楽に関してはアメリカのAmazonから購入することになるようです。
よくわからないのでヘルプページを見てみました。
Amazon ヘルプ >「消費税について」より一部抜粋
消費税は、お届け先が日本国内の場合にのみ課税されます。Amazon.co.jp では、ご注文いただいた各商品、サービスに対し、消費税を課税しています。(お届け先が日本国内の場合のみ)
・ギフトラッピング料、配送料、手数料にも消費税がかかります。
・Amazon.co.jp が販売するKindle本(電子書籍)、MP3ダウンロード商品、アプリストア商品および一部のPCソフト&ゲームダウンロード商品には、消費税は課税されません。
Amazonはアメリカの企業。販売元をうまく使い分ける事で、合法的に商品に消費税を加算させずに販売を行なっているようです。購入者はお得ですが、国内の音楽メーカは価格競争で不利と言えそうです。
<楽天のコメント>
カナダにある子会社で電子書籍の事業を展開している「楽天」は、「現段階ではコメントできない」としています。
NHKニュース「海外企業のネット配信 消費税義務づける案」より一部引用。
楽天は日本の会社なのに非課税?と思ったのですが、電子書籍の販売はカナダのKobo(コボ)社。2012年1月11日に日本の楽天が買収し、楽天の子会社になっています。
よくわからなかったので検索したところ、約2週間前に公開された以下の記事を見つけました。
日本市場向けにサービスが提供されている電子書籍ストアであっても、海外企業が提供しているストアでは、日本の消費税が課税されないため、本体価格だけで購入できる。
具体的には、「楽天Kobo電子書籍ストア powered by 楽天ブックス」は楽天グループの電子書籍ストアサービスだが、これを提供しているのはカナダのKobo Inc.だ。
また、Amazon.co.jpの日本市場向け「Kindle ストア」も、米国のAmazon Services International, Inc.が提供しているため、日本の消費税は課税していない。
消費税納めない電子書籍ストアに身を削って対抗、eBookJapanは価格据え置き -INTERNET Watchより一部引用
なるほど、楽天がカナダのKobo社を買収したのは、技術やインフラだけでなく、消費税対策があったのかもしれません。
AppleのiTunes Store、App Storeは、何故話題にならない?
今回の税制改正のニュースをみて、「うわっ!iTunes Storeの価格が上がる!」と最初に思ったのですが、何故かニュース記事にiTunesやApp Storeのことは書かれていません。そこで、Appleのサイトを見てみました。
A. ITUNES STORE、APP STOREおよびIBOOKS STORE販売規約
お客様の合計お支払い金額には、商品の代金および消費税が含まれます。お客様は免税を受けることはできません。
音楽や映画を配信する「iTunes Store」、MacやiPhone、iPad、iPod touch向けにアプリを販売する「App Store」、電子書籍を販売する「iBooks Store」は、全て消費税が加算されていて、免税されることは無いと書かれています。
ちなみに、これらの販売元は「iTunes株式会社」と書かれていました。
販売者/発行者: iTunes株式会社
代表者: エドュアルド・クー
住所: 東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ
電話番号: 0077-781-35
Appleの場合、日本においては日本法人が販売していて、元々すべて消費税を含んだ価格になっているようです。だから、iTunes StoreやApp Storeが、話題になっていなかったんですね。
消費税の問題点。そして円安による価格高騰の不安。
現在の法律では、販売元を海外にすることによって、消費税課税対象からまぬがれるという実態があるようです。
政府はこれらにも課税出来るよう税制改正を行なうとのことですが、これがうまくいった場合、消費者に対しての価格はどうなるでしょうか?
今年2014年4月から消費税が5%から8%にアップしましたが、来年10月には10%にさらに引き上げられる予定です。それに加えて現在円安基調ですので、その分も価格に反映され便乗値上げされる能性はあるでしょう。
音楽、書籍、映画、アプリなどデジタル商品が増え、「消費税の扱いを今後どうするか?」という世界的な基準も必要になってきそうです。今回は日本からの視点を見てみましたが、逆を言えば「日本からの商品は課税できない!」と不満に思っている諸外国もあるかも知れません。
年間売上1,000万円以下、消費税課税業者の免税。
年間売上が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務がありません。消費税アップを背景に、今、オークションやフリーマーケットなどの個人売買に注目が集まっているようです。
消費税のそもそもについてですが、日本で最初に導入された平成元年(1989年)当時は、消費税反対!の嵐が巻き起こりました。政府は、大手企業は抑え込めても、商店街などで商売を営む小規模な商売人の反発を抑え込むことが出来ずに苦戦したのです。そこで年間3,000万円以下(*1)の事業者は消費税を収めなくて良いという免税措置がとられました。それにより大反発が納まり、消費税が無事(?)導入されたという背景があります。
*1. 15年後の平成15年(2003年)には3,000万円が1,000万円に引き下げられました。
今後は、こういった年間売上1,000万円以下の事業者に対しての、消費税課税業者の免税が撤廃される可能性も考えられます。社会保障費確保のためとはいえ、税金ばかりが先行するので国民としては厳しいと感じざるを得ません。