韓国でエルメスやルイ・ヴィトンなどの高級ブランド品がよく売れています。
一人当たりの購入金額は日本やアメリカを上回り、ブランドを手掛ける各社は韓国商戦を狙って韓国で絢爛豪華なショーを開催をしています。
ではなぜ、韓国人は高級ブランド品にお金を注ぎ込むのでしょうか?
NHKニュース「おはよう日本」でそれについての解説があり、高級ブランド品を買いたくなる心理について興味深く知ることができました。好景気だから売れる……という訳でないのです。
同番組の内容を軸に、関連情報などを加えながら解説します。
韓国は世界一のブランド品消費国
実は今、韓国が世界一位なのです。
アメリカのグローバル投資銀行モルガン・スタンレーの「ブランド品消費報告書」によると、1人あたりブランド品消費国の世界一位は韓国になったと伝えています。
The investment bank estimated South Korean total spending on personal luxury goods grew 24% in 2022 to $16.8 billion, or about $325 per capita. That’s far more than the $55 and $280 per capita spent by Chinese and American nationals, respectively, according to Morgan Stanley estimates.
投資銀行モルガン・スタンレーは、韓国の個人贅沢品への総支出は2022年に24%増加して168億ドル、つまり一人当たり約325ドルに達すると推定した。モルガン・スタンレーの推計によると、これは中国人とアメリカ人がそれぞれ1人当たり支出する55ドルと280ドルをはるかに上回っている。
South Koreans are the world’s biggest spenders on luxury goods (CNBC) より引用
同記事では、韓国で売上を伸ばしている、もしくは人気俳優や音楽アーティスなどがアンバサダーを務めているなど、注目が高まっているブランドとして以下が挙げられています。
- シャネル
- プラダ
- バーバリー
- モンクレール
- カルティエ
- フェンディ
- ティファニー
Nearly all of the major Korean celebrities are brand ambassadors of the leading luxury houses,” the report noted, like Fendi and actor Lee Min-Ho or Chanel and rapper G-Dragon.
報告書は、フェンディと俳優のイ・ミンホやシャネルとラッパーのGドラゴンのように、「韓国の主要セレブのほぼ全員が一流高級ブランドのブランドアンバサダーを務めている」と指摘している。
South Koreans are the world’s biggest spenders on luxury goods (CNBC) より引用
1人あたりの年間ブランド品購入額(国別)
韓国人は、日本人の約1.5倍のブランド品を購入しています。以下は、2022年の1人あたりの年間ブランド品購入額です。
国別
- 韓国 325ドル(約45,300円)←世界一
- アメリカ 280ドル(約39,000円)
- 日本 210ドル(約29,300円)
モルガン・スタンレー調査 2023
Gucci Cruise 2024 Fashion Show 韓国・景福宮(キョンボックン)
そんな韓国に向けて、世界の高級ブランドは韓国商戦に力を入れています。
イタリアのファッションブランドGUCCIは、2023年5月16日、韓国・ソウルにある歴史ある朝鮮王朝時代の宮殿「景福宮(キョンボックン)」でショーを開催しました。
また、フランスのLOUIS VUITTONも、2023年4月に韓国・ソウルにある盤浦大橋という大きな橋の上で豪華なショーを開催しています。
なぜ、韓国人は高級ブランド品を買うのか?
ここからが本題。ではなぜ、韓国人は高級ブランド品を買うのでしょうか?
実はその背景に、住宅事情があるのです。
韓国のマンション価格が、5年間で2倍に高騰!
NHKの報道によると、このブランドブームを後押ししている背景に、住宅価格の上昇があるとしています。
コロナ禍の金融緩和をきっかけに、マンションの価格が2022年までの5年間でこれまでの2倍近くに上昇。その後、価格が下落していますが、まだ一般の人の所得水準と比べると高い状態が続いています。
NHKが行った韓国の街の人へのインタビューでは、以下のような声がありました。
住宅購入を諦め、ブランド品購入に資金を振り向けている
ソウル大学消費トレンドセンターのイ・スジン研究委員は、以下のように分析しています。
解説
韓国ではあまりにも住宅価格が急騰したことで「お金をきちんとためて、家を購入できるだろうか?」「お金を貯めるよりも、今日1日をもっと楽しく過ごした方がいいのではないか」という意識に変わりつつあります。
街の声も同様です。
経済格差による貧困問題を抱える韓国
とはいえ、みんなが高級ブランド品を買えるわけではありません。
韓国では高級ブランドを買える層もある一方で、貧困層はOECD(経済協力開発機構)各国と比較しても高い状況が続いています。アカデミー賞・作品賞を受賞した映画「パラサイト 半地下の家族」で描かれたように、格差が社会問題となっているのです。
【まとめ】日本と韓国、似ているところと違うところ
NHKの番組内では触れられていませんでしたが、すでにマンションや家を持っている韓国の方は、住宅価格の高騰で金持ちになったと感じている方も多いはずです。厚みを増した富裕層によるブランド品購入に加え、住宅購入を諦めた一般層の資金も加わり、韓国国内ではブランド品の需要が多いに高まっているのでしょう。
そんな現場に対し、ネットでは「韓国人は世界のカモ」「顕示欲が恥ずかしい」といったブランド熱に対する批判的な声もあるようです。
ところで、日本でも東京を中心に都心部では不動産価格が急騰しています。東京都23区内のマンションの平均価格は1億2,962万円。今年2023年度上半期に初めて1億円を超えました。もはや庶民が20年・30年の住宅ローンで買えるものでは無くなっています。
ただ、日本の場合は高級ブランドというより、UNIQLO、GU、ZARAなどのファストファッションがよく売れている印象です。私感ですが、2010年代前半頃まではある程度のブランドの服やアクセサリーをメインにしつつ、バレない程度にUNIQLOを混ぜていた方が多かったのではないでしょうか。「ユニバレ」なんて言葉もありましたしね。
今や日本人は、オシャレ着として堂々と安い服を着ていると感じます。
韓国では「高級ブランドを紹介するYouTuberが人気だ」と、NHKの報道でも伝えられていました。日本では、プチプラを紹介するYouTuberの方が圧倒的に人気が高いですよね。
ブランド店が立ち並ぶ東京・銀座でも、外国人観光客が大きな購買層なのではないでしょうか。
日本では「一億総中流社会」がすっかり無くなり、経済格差が社会問題になりつつあります。東京で暮らしていると、富裕層は高級車に乗って高級ブランド品に身を包み、庶民はカーシェアなどを活用しつつファストファッションを楽しんでいる印象を受けます。
- 住宅価格高騰
- 経済格差が社会問題
同様の問題を抱える日本と韓国ですが、庶民の行動の違いが興味深く感じました。どちらが良いのか・悪いのか、という話ではありません。庶民、特に若者層の行動の違いに目を向けてみると、何か面白い気づきが得られるかもしれません。
ちなみに、韓国は非常に深刻な少子化問題も抱えています。日本と韓国、似ているところが結構ありますね。