フリーランサーには、決められた職務がありません。決めるのは自分自身です。
また、時間の使い方も自由です。
そのため、「さてと……今日は何から始めようかな」と思うことは少なくありません。
でも、ちょっと待ってください。
いくら自由だからと言って、思いつきで行動を決めるのはもったいないと言えます。
ドミノを1.5倍ずつ大きくすると、57番目で月まで届く!
2001年、サンフランシスコの物理学者がこのことを証明してみせてくれた。合板で8個のドミノをつくり、それぞれ前のものより1.5倍大きくした。1つめはわずか5センチほどの高さしかないが、最後の8つ目は子どもの背丈ほどの高さだった。結果は? 1つ目のドミノに「コツン」と触れて間もなく、「ドスン」という大きな音が実験場に響き渡った。
このドミノ倒しがずっとつづいたらどうなるかを想像してみてほしい。
これは、一代で全米最大の不動産会社を育てあげた経営者ケアリー・ケラーの著書「ワン・シング (THE ONE THING)」の一節です。
ドミノを例に、「最初に何をすべきかを選び抜く重要性」を説いています。
ちなみにこのドミノ。実験場の都合で「8個」まででしたが、1.5倍で大きくするペースを続けていくと、こうなるそうです。
- 10番目のドミノ 2メートル近く
- 18番目のドミノ エッフェル塔より高く
- 21番目のドミノ エベレスト山を超える
- 57番目のドミノ 月に到達
最初の数個は小さくても、のちにとんでもなく大きくなる、ということです。
多くの場合において、何かを始めて最初からすごい成果が得られることは、ほとんど無いでしょう。たとえば、ブログを開設して2〜3記事書いただけで人気ブログになることはありませんし、中国語を勉強し始めて3日でペラペラになることはありません。
あなたの周りにいる凄い人は、最初から凄かったわけではなく、時間をかけて、成功の上に成功を重ねながら大きな成功を手に入れているのです。
そう。私たちがすべきは、ドミノの先端を見つけて、それを倒すことなのです。
ドミノの先端、自分にとっての最優先事項の見出し方
フリーランサーは、毎日真っ白なキャンバスに向かえる訳ではありません。
何かしらしないといけなことがあるでしょう。依頼を受けている仕事だったり、請求書の発行だったり、打ち合わせだったり、情報収集だったり……。そうしたやるべきことをリスト化しておくと、忘れずにこなすことができるので便利です。
でも、ケアリー・ケラーの「ワン・シング」では、「TO DO リスト」に否定的です。
TO DO リストとは、やることリスト。パソコンやスマートフォンで、日々の「TO DO」に終えた印を入れ、リストを減らすことに邁進している人は多いでしょう。でも、TO DO リストにしてしまうと、優れた決断ができなくなってしまいます。最も重要なひとつが選べないのです。
もし、あなたがフリーランサーではなく、社員を抱える会社の社長だったとします。
そんな社長が、大小の案件が混在するTO DO リストを、ひとつずつ消し込む日々を送っていたらどうでしょうか。無難な経営はできるかもしれませんが、きっと圧倒的な成長は望めないでしょう。ここぞという一つのことに集中力を傾けることで、成功に導くことができるのではないでしょうか。
ケアリー・ケラーは最重要項目を見つけ出す際、「パレードの法則」を利用しています。パレードの法則とは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(1848 – 1923)が発見した統計に関する法則で、「80:20の法則」とも言われています。
パレードの法則の具体的な説明は割愛しますが、「企業の利益の80%は、全社員の20%が生み出している」「売上の80%は、20%の商品で占められている」など、原因と結果の不均衡を説いています。
このパレードの法則を、あなたが作った「やりたいことリスト」に当てはめ、20%の「すべきことリスト」に選抜します。さらに、その20%から20%を選び、さらに20%から20%を選び……と繰り返すことで、絶対に必要なひとつのことが見つかるのです。
当たり前のことですが、最も重要なことをするのが、常に最も重要なことです。
一点集中がもたらす驚きの効果、マルチタスクよりシングルタスク
本書の日本語訳版の表紙には「一点集中がもたらす驚きの効果」とサブタイトルが付けられています。
現代人は忙しくて、多くの人はあれこれ同時にしようとしてしまいがちです。しかしケアリー・ケラーは、同時に物事がこなせる魔法のような「マルチタスク」は人間には備わっていないと言います。
同時にしようとすれば、注意力が低下しミスや事故の原因になったり、他の案件に気をとられて気持ちの切り替えに時間のロスが出たりすると言います。
人間は基本的にシングルタスクである、と。
そのため、なれるはずのない魔法使いを目指すのではなく、シングルタスクで一点集中すべきなのです。
本書「ワン・シング」の内容は、とてもシンプルです。
今やるべき最も重要なことを見つけ出して、それに一点集中する。それを繰り返す。
これだけです。
フリーランスは自由だからこそ、自由に流されてしまいがちです。だからこそ、やるべき最も重要なことを導き出す努力が必要なのです。