うちのすぐ近所に、コロコロと入れ替わりの激しい飲食店があります。
僕が、この地に引っ越してきた当初はカフェだったのですが、その後ローストチキンが売りのレストラン・バーになり、そしてバル、現在はイタリアンのレストラン&カフェになっています。
なんというか、開店時はお祝い花が溢れ、とても華やかなのですが、数日するとあっという間に閑古鳥。ランチも始めてみるけど、サッパリ振るわず。数ヶ月後には閉店し、店舗貸出中の札が掲げられる、というのを繰り返しています。
それを目の当たりにする度に、「あーぁ、もったい無い。なんという無駄遣い!」と思うのです。
だって、新しい飲食店をオープンするには、以前のお店の設備を一部引きつぐ居抜きであったとしても、少なくとも数百万円はかかるでしょう。看板の付け替えや内装工事など、業務用の工事や設備は高価です。
さらに、不動産契約後は、家賃、光熱費、仕入れ代、シェフやホールスタッフなど従業員の賃金、お店の宣伝費などがかかります。
閑古鳥状態で6ヶ月間踏ん張ったとしたら、初期費用+運営費で、その赤字は1千万円を超えるまでに膨らむのではないでしょうか。
では、なぜ失敗するのか。場所が悪いから? いえ、そんなことはありません。場所は目黒区と世田谷区の境目の住宅地。付近に繁盛している飲食店はいくつもあります。
失敗する理由は、戦略が間違っているからなのです。
コロコロと入れ替わるこれらの飲食店は、いつも「満を持してオープン!」感がまったくありません。自宅のすぐそばにあるにもかかわらず、行く気が起きないのです。
残念です。
お金がもったいないです。
儲かったのは、工事を受注した工務店とその下請け業者だけです。
ビジネスのアイデアを事前に診断。儲けられるかチェックできる!
ビジネスのアイデアを考えるのは、何も会社やお店の経営者だけではありません。企業で、企画や営業を担当するサラリーマンにもその機会はありますし、僕のようなフリーランス(ライター、編集者)であっても、日々、今後の戦略を立てたり、軌道修正したりしています。
でも、それが上手くいくのかどうかを判断するにあたって、直感ばかりに頼るのはリスキーです。
直感といっても、そこに至るまでにマーケティングを行い、さらにに自分の経験を加え、判断しているのでしょう。でも、あなたが「これは絶対に当たる!」と信じているアイデアも、実際はギャンブルに近いと思うのです。
そのビジネスアイデアが、当たるのか、外れるのか。
もっとズバリ言えば、儲かるのか、儲からないのか。それが事前にチェックできる方法が、ある本に書かれていました。
そのビジネスから「儲け」を生み出す9つ(ナインセル)の質問
テレビ朝日「お願い!ランキング」の『第二検索株式会社』に、《経営のプロ》としてホリエモンさんと共演していた、川上昌直(かわかみ まさなお)氏の著書。川上昌直さんは、1974年大阪生まれ、現在は兵庫県立大学で経営学部の教授です。
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川上さんは、ナインセル(9個の質問)をビジネスのチェックツールとして提唱していて、これがとてもシンプルかつ強力。本書には「タイヤとエンジンを揃えてから、勢いよく走り出せ!」といったことが書かれています。
ナインセルでは「顧客価値」と「利益」を同時に生み出し、それらを机上の空論で終わらせず素早く実行に移すために「プロセス」を考えていきます。顧客価値と利益が車の両輪だとすれば、プロセスはエンジン。9つセルが揃って初めて、ビジネスという名の車は勢いよくスタートできるのです。
ナインセルは、顧客価値、利益、プロセスの3つの視点からビジネスをとらえ、コンセプトに抜けや漏れがないかチェックすることができます。その上で、ナインセルを横軸、縦軸、ときに斜めに検証し、より堅牢なプロジェクトへと高めて行くのです。
徹底したお客様視点に共感! ニーズではなく、用事の解決に注目すべし
僕がなぜ、この本が良いと思ったのか。
それは、本書から見え隠れする川上さんの信念が、僕の心に響いたからです。
川上さんは、ナインセルでは「お客様視点」にこわだっています。それは、僕も強く同感する部分であり、すべてはそこに集約されると考えています。
本書の中で川上さんは、以下のような言葉を残しています。
- ビジネスの目的は、顧客満足を追求して世の中をよりよくすること。
- お客様が困っている、不便に感じていることは何か?
- ニーズではなく、お客様が解決したい「用事」に注目すべし。
本書のタイトルに「儲け」とあるので、いやらしさも感じましたが、内容は一貫して誠実です。そんな誠実な川上さんの想いに打たれ、ナインセルを信じてみたい、という気にさせられたのです。
本書は「1,500円 + 税」です。
ビジネスのアイデアを作り上げる、そしてそれが上手く走り出すかどうかがチェックできる。そのための経費としては、充分価値があると思います。
これから世に放つビジネスアイデアの、健康診断にいかがですか。
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