ベースミュージックという言葉を、最近よく耳にします。レゲエと近い位置にあるジャンル(?)というぼんやりとしたイメージがあるけど、実は何なのか良くわからない。
日本のレゲエファンの多くは、レゲエのみを聞いている方が多いように思います。プレイヤーもリスナーも、一歩外には踏み出す人が少ない印象。
それはそれで素晴らしいと思います。こだわって追求していると言う事なので。
でも、ふと気づけば、身近なレゲエファンがベースミュージックに夢中になっていたりで、もはや無視できない状況になってきました。
ヨーロッパで開催されているベースミュージックの祭典「Outlook Festival」が、2011年より日本でも開催されるようになりました。今年2013年は、5月19日新木場ageHaにて行われます。
そんな日本版ベースミュージックの祭典「Outlook Festival JAPAN Launch Party」に出演の、TRIDENT(トライデント)さんに、『ベースミュージックとは何なのか?』『そしてその魅力は?』など、インタビューを行いました。
TRIDENT プロフィール
以前からセレクター、DJとして活動していた7人くらいが、2004年頃からMIDNIGHT ROCKとしてサウンドを始める。レゲエ、ダンスホールを軸に、ベースミュージックに焦点を当てた幅広い選曲を得意とし、ジャンルの垣根を越えた、雑食型重低音音楽を演出。オリジナルMIDNIGHT ROCKレーベルのオーナーであるJAH THOMAS公認。その中心メンバーであるTRIDENT。サウンド活動以外にもレゲエ関連の翻訳、通訳、海外レゲエレーベルの配信ディストリビューターなど裏方としても幅広く活躍中。
(Outlook Festival Japan 公式サイトより)
TRIDENT(トライデント)インタビュー
■レゲエサウンドなのに、ベースミュージックを始めた切っ掛けは?
完全に可能性ですね。お手本が基本的にジャマイカだけじゃないですか、レゲエだけだと。「Stone Loveの、あの選曲、あの曲順が」とか。それが、もうそろそろ良いかな…って。
別にStone Loveにもなる気はないし、Fire Linksでも、Tony Matterhornでもない。お手本ありきのプレイじゃなくて、表現を広げた方が良いなって思ったんです。
最近は、特にUKのレゲエ・シーンに一番感化されてるんですけど、UKって、UKレゲエもあれば、ガラージュやグライムっていうシーンがあったり、色んな音楽が “密” なんです。アーティストも、その辺を行き来してるんですね。
だから同じアーティストでも、ハウスに乗せてる歌う人もいれば、レゲエに乗せてる人もいるんです。その雑食感が超面白くて。そんな彼らは「だって面白いじゃん!俺が歌えばレゲエだし」って事を言ってるんです。
だから、ウチらはベースミュージックの選曲してるけど、「サウンドです」って言って廻してるんで、何掛けようとレゲエなのかなって。
■トライデントさんは、何をしているの?
MC業ですね。サウンドMIDNIGHT ROCKのMCもやってますけど、ラジオのMCをやったり…、いわゆるMC業ですね。今年のOutlook Japanでは、ピンのMCとして参加し、PART2STYLEのMCとして出ます。
■ラジオは、どんな番組でMCを?
インターネットラジオBlock.FMで、毎月第2第4月曜日に「SDM RADIO」生放送でやってます。
あと、フランスの「PARTY TIME RADIO」もPART2STYLEと出ています。こっちは収録で、新宿のDUUSRAってお店で公開収録をやってます。
→ Party Time Reggae Dancehall Webradio & WebTV
■ベースミュージックって、そもそもどういった音楽?
サウンドシステム・ミュージックです。「いかにセット(スピーカー)での鳴りを鳴らせるか!」っていう音楽。体感型という感じですね。
最近のダンスホールレゲエって、なんかベース(低音)が無いじゃないですか。
昔って、例えばPunnanyリディムって「ティティティ、ティティティティ、ティテッティ」のイメージだけど、サウンドシステムで聴くと「ズーン、ズンズズン、ズーン、ズンズズン」が印象深くなる。
最近のリディムって低音だけ聞いて、「これ何のリディムか?」って言われてもわかんないんですよね。
で、そこの部分(低音)だけを切り取ったものを求めていった結果、ダブステップとかジャングルとか、ベースミュージックが発展して行ったんです。
■えっ?!ベースミュージックって、ルーツはレゲエ?
サウンドシステム・ミュージックなので、レゲエが大きく影響を与えている事は確かです。
■えっ?!だったら、昔の80年代とか90年代のレゲエは気持ち良かったって言う人には…。
意外とベースミュージック面白いかな、って思います。(笑) あと、ベースミュージックってレゲエ臭がめっちゃするんすよ。ディージェイも、昔ながらのフロウ、ラガマフィン・フロウだったり。そう、あの頃のフロウが未だここにはあるんですよ。
ニューチューン(新曲)として、往年のレゲエが新感覚で聞ける感じです。
■Outlook Japan 2013に、日本人ラスタ・アーティストPAPA U-Geeさんがラインナップされていますね。
ニュールーツ・ステッパーズ(簡単にいうと四つ打ちルーツ・ミュージック)で歌うんじゃないかなと。PAPA U-Geeさんはフィリピンから帰って来たばかりなんですが、アジアでも香港、上海、北京などでOutlookのローンチパーティーをやっていて、ニュールーツは人気です。
■ベースミュージックの勢いをどう感じていますか?
ベースミュージックって、ハウスとかテクノとかの様に普通に浸透している感じですかね。Jr Gongから、きゃりーぱみゅぱみゅまでもが音楽の手法として表現していますしね。
ベースミュージックの発祥はイギリスですけど、アメリカでもMajor LazerのDiploやSkrillexなどベースミュージック寄りのアーティストが第一線で活躍し流行っていますね。
■本場Outlook Festivalは、クロアチアで開催されてますよね。
あれは、イギリスのメンツがクロアチアがやってて、バカンス・フェスティバルというか。クロアチアのプーラっていうリゾート地があるんですけど、そこの元要塞が会場なんです。
日本で開催される前、本場クロアチアのOutlook Festivalへ行って来たんですけど、めっちゃ面白かったですよ。ほんとベース祭でした。外国から国を守る為の元要塞(砦)を会場にしているので、ダンジョンとか、吊り橋とか、お堀とか、いろんなフロアがあるんです。
お客さんはヨーロッパ中から来ていて、コール&レスポンスで「From UK!(イギリスから来てる人は?)」の反応が一番大きかったので、イギリス人が多いんだと思います。
これは国を挙げてのお祭りなので、スタッフはクロアチア人だったりで、ミルコ・クロコップ(キックボクサー)みたいな警備員がいっぱい居ました。(笑) イベントは4泊5日で行われ、世界から3万人近いお客さんが集まるので、経済効果も相当だと思います。
■日本のアウトルックは?
本国の開催に向けてのプレ・パーティーとしての位置づけです。毎年、本国に出演するアーティストが日本のOutlook Festivalにも出ています。ジャマイカのレゲエで例えるなら「Sting ローンチパーティー in JAPAN」みたいな感じです。
1回目をeleven(東京・西麻布)でやって、2回目をTABLOID(東京・浜松町)、今年2013年はageHa(東京・新木場)で開催されます。
■どんな人におすすめ?
極端な言い方をするとレゲエに飽きた人。(笑)
普通のオーセンティック・レゲエに飽きた人もそうですし、理想はイギリスみたいにギャル、ギャル男みたいなキッズ達にもバンバン来て欲しいですけどね。向こうではそれくらい浸透してて、お兄ちゃんお姉ちゃんが酒飲んでバカ騒ぎしてるのに、何故かToots & the Maytalsめっちゃ反応して歌う、みたいな。
純粋に、音楽をカラダで体験したい人は、みんな来てもらいたい。
本国、そして去年同様に今年もエントランスで《耳栓》配ります。結構ヤバいですよ。去年も眼球が低音で揺れて、目がブレてCDJのモニターが見えないっていう(笑) リハの音出しの時も、箱全部が揺れて、上からあり得ないくらいホコリが降って来ました。
▲Outloof Fes.2011。David Rodiganが、Desmond Dekker「イスラエルちゃん」、Toots & the maytals「54-46」をプレイし、会場BUSS!
■ずっと低音?
音楽なんで、もちろん抜き差しはありますよ。
あと、CDJやPCでDJする際に適当に拾って来たmp3音源でプレイすると粗がわかるというか、「低音出てないじゃん」ってなるんです。出演者は出音まで意識しないと脱落するかな。
■入門者に向けて「まずはこれ聞いとけ!」的なのを紹介してください。
手っ取り早いところで、まずは僕らのインターネットラジオBlock.FMの「SDM RADIO」を聞いてみてください。ネット環境あれば、PCでもスマホでも聞けるんで。
あと「ジャマイカだけが正解じゃないし。こんな変なレゲエってあるんだ」って事を知って欲しいですね。ただ、親はジャマイカなので、ジャマイカン・レゲエはいつまでも続いて欲しいなと思います。
ジャマイカのアーティストの通訳をしている合間に雑談をすると、彼らの方が海外各国に行っていて、ジャマイカ以外の国を知っているんですよ。僕らはせっかく日本にいるので、大元のジャマイカだけ見るんじゃなくて、日本にはジャパレゲがあるように、レゲエが世界で派生・進化してゆく様にも注目しても良いんじゃない、ってのはありますね。
向こうでは、ダブステップとか廻してても、必ずMCは居るんすよ。で、パトワ(ジャマイカ語)を喋り、Pull Upし、ダブプレート文化もある。レゲエなんですよ。
レゲエの文化はそのまんまに、掛ける表現方法がちょっと違うかなくらいで、マナーはレゲエそのままなんです。
レゲエをBASE(土台)に発展したBASS(低音)MUSIC……かな?
なるほど!イマイチわかっていなかったベースミュージックについてのモヤモヤが晴れました。Thx, TRIDENT(@midnightrock) !!
《レゲエをBASE(土台)に発展したBASS(低音)MUSIC》といったところでしょうか。
“わかりやすく” を心がけているSwingin’ Thinkin’ですが、今回は特にレゲエファン以外には少々難しい内容になりました。しかし、小さな島国ジャマイカのレゲエが世界に波及し、他の要素を取り入れて独自の進化を続けている、というのはワクワクさせられます。
食わず嫌いは、楽しみを知らないまま自分が損しそうですね。やっぱり音楽は面白い!