「写真をトレースして絵を描いた」
「無断トレスが問題になっています」
「トレパクと模写の違いは?」
こういった言葉がSNSなどネット上に溢れていました。ここで気になるのが、トレースとトレスはどちらが正しい表記なのかということ。
結論は「正しい表記はトレースで、トレスも間違いでは無い」ということ。その理由について解説します。
国語辞典の表記はトレース

国語辞典を調べてみると、以下のように書かれていました。
(Trace)
- 描くこと。
- 図面(を引くこと)。図形。
- 敷き写しすること。透写。
- (登山で)踏み跡。また、踏み跡を辿ること。

うちの小学生の息子です。大好きな漫画『ドラゴンボール』にトレーシングペーパーを敷いて、コミックの絵をなぞって写し描きしています。これこそ、まさにトレースですね。
また、登山で踏み跡を辿ることという意味があるように、登山に限らず先人のやり方を真似るのこともトレースということがありますね。
記者ハンドブックには記載なし

マスコミ関係者が使っている新聞用字用語集『記者ハンドブック』には、表記を統一するために様々な単語や言い回しが掲載されています。しかし、外来語欄にトレースは記載されていませんでした。
また、同じく表記の統一などで使われる『日本語表記ルールブック』にもトレースの記載はありませんでした。
文化庁『外来語表記』にも記載なし
文化庁の国語施策・日本語教育の内閣告示・内閣訓令にある『外来語の表記』も、表記を統一で活用されていますが、ここにもトレースの記載はありませんでした。
トレスは、漫画・アニメ・イラスト系の同人界隈やSNSで使われる略称
では、トレスとは何なのか?
漫画・アニメ・イラスト系の同人界隈でよく使われていて、SNSでも使われている略称といえます。
用例も様々あります。
- トレス素材
- トレス絵
- トレスイラスト
- 原トレ(原画トレス)
- トレパク
- トレス疑惑
界隈っぽさがあり、文字数が限られるSNSは1文字でも少ない方がいいですからね。
とはいえ、トレスは近年使われるようになったわけでなく、1960年代に発売されたトレスマシンという、セル画アニメの時代に使われていた、紙に描かれた原動画の描線をセルに白黒転写するコピー機もあったそうです(参照:Wikipedia)。
【まとめ】トレースとトレスの使い分け
トレースとトレスが混在しているわけですが、まとめると以下のとおりです。
- トレースは正規表記。メディア、商用文書、公式資料などで用いる。
- トレスはカジュアルな略語。界隈やSNS、友人らとの会話などで用いる。
どちらも間違いではありませんが、基本はトレース。カジュアルに使いたいときはトレスというわけです。
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