本場を追求するか、日本人向けにつくるか。NHK朝ドラ「マッサン」から学ぶ、意見相違時の乗り切り方。

NHK朝ドラに関する記事なのですが、まずはたとえ話として、僕が長らくいるレゲエ業界の話をします。

80年代〜90年代前半は、レゲエが世界規模で大ブレイク!日本においても、ジャマイカ人アーティストが毎年大勢来日し、数万人規模のビックフェスが日本各地で開催されました。その後、90年代後半に入り、ジャマイカのレゲエに衝撃を受けた多くの日本人レゲエ・アーティストが活躍するようになりました。そして2000年代半ばには、日本人レゲエ(いわゆるジャパレゲ)のブームがおき、日本人アーティストがメインの数千〜数万人規模のフェスやビッグダンスが日本中で開催されるようになってゆきました。

しかしその後、CDが売れない時代へと突入し、音楽市場の低迷が叫ばれるようになりました。

レゲエシーン(業界)が右肩上がりの時代はそれほど話題にはならなかったのですが、市場が縮小しはじめると「本場ジャマイカのレゲエを踏襲すべき」「日本人向けのレゲエに改良すべき」という論争が顕著になってきました。

ひと言で言うならば……
前者は、本物志向。
後者は、お客様志向。

この正解は僕にはわかりません。本物志向すぎるとコアなファンにしか受け入れられないし、お客様志向すぎるとコアファンにとっては物足りなさを感じる事がある。皆さんはどう思いますか?

NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」。

NHKの朝の連ドラは面白いですね! 2011年4月の「おひさま」以来、毎回観るようになりました。今、放送中の「マッサン」も最高に面白いです。

主役のマッサンは、ニッカウヰスキーの創業者がモデル。そして、今マッサンが働いている鴨居商店の大将(社長)は、サントリーの創業者がモデル。現在ライバル会社であるそれぞれの創業者は、かつて共にウイスキー造りをしていたとは知りませんでした。

ちなみにニッカウヰスキーのマッサンは、広島の酒蔵出身の「本物志向」。そしてサントリーの大将は、大阪出身の根っからの商売人。買っていただいてなんぼの「お客様志向」。現代においてもサントリーはハイボールをヒットさせ、当時の商売上手の血が脈々と受け継がれているのがうかがえます。

そんなマッサンと大将は、鴨居商店で国産初のウイスキーを完成させ、発売しました。しかし、まだウイスキーに馴染みのない日本人の味覚に合わず、全然売れない。そんな最中、ドラマではこんな展開が繰り広げられました。

本場スコットランド産ウイスキーを目指す本物志向のマッサンと、会社を経営する大将が激突!

鴨居商店の大将

  • 鴨居商店の社長(以下、大将):お前はどうするんや? 鴨居商店に残るんか。もしうちに残るのなら営業に回れ。
  • 鴨居商店ウイスキー工場の工場長(以下、マッサン):営業?
  • 大将:工場の方は、今後英一郎(社長の息子)に任せる。お前は当面、鴨居ウイスキーの営業に回れ。
  • マッサン:なんで、いきなり?
  • 大将:客にこびてまでウイスキー造りたない言うてたな。
  • マッサン:……はい。
  • 大将:お前は、誰の為にウイスキー造っとんのや。
  • マッサン:わしはただ、今の鴨居ウイスキーがわしらが目指してたウイスキーとは……。
  • 大将:勘違いすな!お客さんがおって、初めてわてらは造らせてもらえるんや。商品が売れなんだら、原料は手に入らん、月給も払えん、会社は潰れてしまう。そやから皆、必死で売ろうとするんや。
  • マッサン:わしじゃて……わしじゃて必死でうまいウイスキー造ろう思うて。
  • 大将:うまいウイスキーって何や?
  • マッサン:……。
  • 大将:お客が何を求め、人がどんな顔して飲んでるんか感じてこい。売るいうんがどれくらい大変なんか、自分でやってみい。ウイスキー背たろうて、1本でも2本でも売ってこい。四国でも九州でも、うちの営業がまだ行き届いてないところへ行って、お客さんつかんでこい。

悔しがるマッサン

 

うーん、これを観ながら思わずドキッとしました。日本のレゲエシーンでなされている議論とそっくりだ、と。

皆さんの身近な業界においても、似たような議論はあるのではないでしょうか。

ドラマではその後、マッサンは営業に回り、セールスの苦労を知る事となります。そして帰ってきた後、「まずは日本人の口に合うものをつくらないといけない」と考えを改め、ウイスキー工場の工場長に復帰します。

現在、ドラマの展開はここまでです。

しかし、現実ではサントリーとニッカウヰスキーの2つの会社に分かれています。この時の意見の相違は、後になっても心に引っかかり続け、まもなく袂(たもと)を分かつことになるのでしょう。

記事タイトルに書いた「意見相違時の乗り切り方」ですが、実はこれには方法が無く、『それぞれ別の道を歩む』というのが現実の展開です。かといって、サントリーやニッカウヰスキーのように、いずれも大成するとは限りません。 その辺りの成り上がりについては、ドラマ「マッサン」を観ながら学んでみたいと思います。

レゲエに当てはめてみると……

大将:客にこびてまでレゲエ歌いたない言うてたな。
マッサン:……はい。
大将:お前は、誰の為にレゲエ歌っとんのや。
マッサン:わしはただ、本場ジャマイカのレゲエを日本で……。
大将:勘違いすな!お客さんがおって、初めてわてらは歌わせてもらえるんや。商品が売れなんだら、原料は手に入らん、月給も払えん、会社は潰れてしまう。そやから皆、必死で売ろうとするんや。
マッサン:わしじゃて……わしじゃて必死で良い曲つくろう思うて。
大将:良い曲って何や?

今回は例としてレゲエアーティストに例えて書きましたが、自分がやっているライター、メディア運営などに当てはめても同じような事が言えます。うーーん、難しいですね!