大阪・岸和田には嵐やAKB48より売れているCDがある。初回プレス10枚から大ヒットへ。

知らんかった……。

だんじり祭りで有名な、大阪府岸和田市。南大阪の泉州一帯では超有名な、IKECHANの「ケヤキの神」という曲があります。ケヤキとはだんじりを素材となる木材のことで、これはだんじりをテーマにした曲です。

僕が青年団だった20年ほど前にこの曲が発売され、町内会の寄り合いの際、IKECHANが営業でやってきて町民の前で歌を披露してくれました。そんな地道な活動が実り、今では岸和田やその周辺地域で、IKECHANを知らない人はいないほどです。

そんなIKECHANの「ケヤキの神」ですが、僕が子供の頃からずっとある岸和田駅前商店街のCDショップ・ヤングレコードで、累計で一番売れている曲がこの「ケヤキの神」なんだそうです。店主曰く……


「アーティスト別なら、年に数回CDを出す(人気グループの)嵐に負けるけど、曲別なら今も一番ちゃうかな」

岸和田席巻、だんじりソング CD販売20年近く上位:朝日新聞DIGITALより一部引用(【追記】記事公開終了しました)


なんと、曲別ランキングではIKECHAN「ケヤキの神」が1位とのこと! さすが、地元に根付いた曲は愛され具合が違いますね。しかも驚くべきことは、これだけではありませんでした……。

たった10枚から、ロングセラー大ヒットへ!

実はこの「ケヤキの神」、初回プラスはたった10枚だったそうです。


IKECHANは岸和田市の隣、貝塚市出身。自身も子どもの頃からだんじりに親しんだ。一方で、路上ライブを続けて歌手を目指したが、なかなか道は開けなかった。29歳で吉本興業に所属。付き人をした漫才師の宮川大助さんの「自分の街に生活感や空気としてある何かを歌うのが大切やろ」の言葉にハッとした。

「泉州ならだんじりですわ」。最初に作ったのが、曳き手の視点を歌詞に盛り込んだ「だんじり」という曲。10枚だけCDを作り、有線放送局でかけてもらうと、問い合わせが相次ぎ、結局2万枚を売った。

岸和田席巻、だんじりソング CD販売20年近く上位:朝日新聞DIGITALより一部引用(【追記】記事公開終了しました)


インディーズで2万枚販売したCDですが、IKECHANは2年後、テイチクレコードとメジャー契約。改めて「ケヤキの神」が発売され、そのから今もなお売れ続けているというスーパーロングセラーです。

ちなみにこのCDはアルバムではなくシングルで、「ケヤキの神」と「祭華(さいか)」が収録されています。

近年、音楽がなかなか売れないと言いますが、インターネットとスマートフォンの普及で、「全国規模、なんなら世界でもヒットしないかな」と、大きく狙うアーティストもいるでしょう。とても夢のある話ですが、現実的にはターゲットが広がれば広がるほどライバルが増えるので、IKECHANのようにグッと的を絞るというのも良いかもしれません。

また、次々と新曲やアルバムを発売するのではなく、1曲(1枚)入魂で、しっかりとプロモーション活動を行う。こういうのも現代ではなかなかないですよね。

しかし、「ケヤキの神」はすごい。だんじり祭への参加者は、毎年毎年若い子が出てくるので、それに合わせていつまでのCDが売れ続けるという……。泉州という地域限定ではありますが、こんなヒットの仕方もあるんですね。