25年前の北野武初監督映画「その男、凶暴につき」を、今頃初めて見ました。

その男、凶暴につき [1989年 日本 / 松竹富士]
「怖い暴力を表現」:☆☆☆☆


 

その男、凶暴につき

芸能人が、映画を撮るとか、小説を書くとかって、なんとなく苦手で敬遠しています。というのも、芸能人として初めから優位な立ち位置にいるので、いかにもセールスを見込んでいるような気がするからです。

とはいえ、北野武さんに関しては、その域を超えました。嫁さんにせがまれて行ったアート展「BEAT TAKESHI KITANO 絵描き小僧展」でニヤニヤさせられたり、その後レンタルで観た映画「アキレスと亀」が面白かったり、著書「超思考」で感銘を受けたりで、かなり今更ながら、北野武さんの奇才っぷりに気がついている次第です。(偉そうにスンマセン)

そんな事もあって、北野武さんのまだ観ていなかった初映画監督作品「その男、凶暴につき」(1989年)を、今になって観てみました。

暴力の恐怖が、見事に描かれていた。

その男、凶暴につき

殴る、蹴る、追う、撃つ。

表現に仕方によっては、痛快アクションにもなりますが、この作品はその真逆。痛快ではない怖い暴力が表現されています。

ただ、暴力が日常にある人にとっては、痛快かも知れません。なぜなら、主演の我妻(あずま)刑事を演じる北野武に一切の迷いが無いから。一言でいうなら、狂気です。

個人的には、前半に出てくる同居する妹が連れ込んだ男に詰め寄るシーンが好きです。ボカスカやった後に、「結納しなきゃなぁ。なんだ、てめえ逃げんのか、コラ」。我妻刑事の人と柄が良い感じに出ています。

映画の中では、ひたひたと歩く、猛烈に走る、じりっと歩み寄るなど、動くシーンが良く出てきます。その際の足音が印象的で、緊張感を高めています。それは恐怖だけではなく、哀愁であったりもする訳です。

25年前の映画ですが、念のためネタバレをしないように言うと、暴力が暴力を呼び、また暴力につながる。誰かが途中で欠けて(死んで)も、それは誰かが代わって暴力は粛々と続いてゆく。そういった事を表現している映画だと思います。

四半世紀前と古い映画ですが、今観ても、とても衝撃的で印象深い作品でした。


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<最後にひとこと>
しかし、出演者がみんな若いですね。たけしさんはバイク事故を起こす前だし、脇役で遠藤憲一さんが出てきたり。遠藤憲一さんはちょい役だけど演技が上手い!