歌川国芳展、浮世絵から垣間みる江戸っ子カルチャーのユニークさ。没後150年「歌川国芳展」

六本木ヒルズ 森タワー東京・六本木で開催、江戸の浮世絵師「歌川国芳展」を見に行ってきました。

没後150年「歌川国芳展」
2011年12月17日〜2012年2月12日
(前期 1月17日まで / 後期 1月19日から)
@森アーツセンターギャラリー
東京都港区六本木6丁目10−1
六本木ヒルズ 森タワー52F
→ 展示会特設サイト (kuniyoshi.exhn.jp)

歌川国芳は1798年江戸時代後期、江戸日本橋に生まれた生粋の江戸っ子。幼いころより絵を学び、生涯を通じ浮世絵師として活躍し続けました。亡くなったのは1861年、まさに幕末動乱のさなか、明治にかわる7年前に63歳で生涯を閉じたのです。

江戸時代といえば、約270年続いた徳川幕府時代。戦が少ない割と平和な年月が続き、日本史の中でも、もっとも文化・芸術が発展した頃です。そんな江戸カルチャーたっぷりの時代を生きた男の作品、と言うことになります。

森アーツセンターギャラリー

会場は六本木ヒルズ、森タワーの52階。
地上230m、日本でもっとも高い位置にある美術館。

今回の展示会へ行った友達モリカメラの話では、『平日にも関わらず、なんと大量の人々がいたことか』 との事。自分が行ったのは日曜日だったので、覚悟の上、朝早く11時過ぎに会場へ到着しました。すでにチケットを買うのに行列。約10分の待ち時間で会場へ入ることが出来ました。

Twitter (iPhone)森アーツセンターギャラリー 会場入り口

余談ですが、夕方Twitterで「歌川国芳」を検索したところ、「入場規制」「チケット買うのに20分待ち」など、更なる混雑がツイートされていました。行くなら朝イチが良さそうです。

没後150年「歌川国芳展」

歌川国芳展、驚かされる数字と緻密さ

さて前置きが長くなってしまいましたが、「歌川国芳展」で驚かされたのは、作品の緻密さと色使い、そしてその作品数の多さです。現在確認されている歌川国芳の作品数は2,000点と言われていますが、今回の展示会では200点強が並べられていました。たった(?)10分の1ですが、見終わったあとは、その作品数に圧倒されると思います。しかも、それが緻密で、さらにほとんどが版画!

歌川国芳展ウェブサイト

絵のテーマは時代が求めるものすべて?

絵の題材は、さまざまです。
源平時代や戦国時代、果ては中国の水滸伝など豪傑達が活躍する『歴史』。江戸の人気カルチャー『歌舞伎』。子供向けの『作法が学べる絵』『双六』。猫や金魚、キツネやタヌキを擬人化して世の中を表現する『風刺』画。ファッションの流行を伝える『女性』絵。等々、「その時代の人たちは、この絵を見て楽しんでいたんだろうなぁ」と思えるテーマがふんだんにありました。

本朝水滸伝豪傑八百人之一個今の時代でこそ、無数の書籍やインターネットがありますが、江戸時代に歴史物ひとつ描こうと思ったら、時代背景を研究しないといけません。「一つの作品を作るのにどれだけ時間が掛かるのだ?!」と想像してしまいますが、作品点数から考えると、そんな悠長なことはなく、凄まじいスピードで仕事をしていたんだろなぁ、と思わざるを得ませんでした。

弟子入りしたり、弟子を抱えたりする時代。一人で作業するのではなく、数人のチーム(なんて言うんでしょうか?)で作品を仕上げていたのでしょう。そもそも版画なので摺る係の人も大勢居たんだろう思います。もちろん、木版の掘り師なんかも。

刺青の流行発信

今のタトゥーを除いて、日本の入れ墨といえば龍や鯉、豪傑達を色彩豊かに躍動感たっぷりと描く和彫り。現代にも続くその流行のルーツは、歌川国芳による歴史物の浮世絵なんだそうです。

草食系なんていわれる輩が出現する現代とは大違いですが、江戸時代は強い男が当然だったのでしょう。そんな強さを競う男達をアッと驚かせるためにも、国芳は新作を描き続けていたと思うと、なかなか面白く見えてきました。

政府の圧力にも屈しない(転んでもただでは起きない)

一番面白かったのはココです。
国芳が45歳の頃、江戸時代三大改革のひとつ、老中水野忠邦による「天保の改革」が行われました。凶作・飢饉がきっかけなのですが、質素倹約、風紀取り締まりの号令が発せられ、役者絵(今でいう国民的ビックイベントのポスター)、女性画(今でいうファッション誌)が禁じられたのです。

そんな世になってしまった訳ですが、国芳は屈することなく、新たな手として、擬人化した動物や妖怪をつかった風刺画、また教育によい子供向けの絵を描きました。

政府の規制に屈することなく、絵師としての道を走りつづけた歌川国芳。それがバネになってか、ユニークで楽しい絵に進化して行ったように感じました。

歌川国芳 絵はがき

メディアとしての浮世絵

当時は、テレビ、ラジオ、インターネットが無い時代。世間の動向や流行、歴史などは、そんなに簡単に知り得なかったでしょう。そんな中、浮世絵師歌川国芳の作品を見て、大勢が笑ったり、驚いたり、興奮したりしたんだと思います。

そんな意識を持って、今回は「メディアとしての浮世絵」として展示会に挑みました。自分自身が江戸後期の庶民になったつもりで、絵を拝見。ちょっとした本格江戸っ子体験です。皆さんも、そんな気持ちで見てみてはいかがでしょうか。

ちなみに、六本木でのこの歌川国芳展、1月19日からほぼ全点入れ替えの後期展がはじまるそうです。再び、行ってみたいですね。

余談:手荷物、上着など、コインロッカーは入館前に。

六本木ヒルズ森タワー52Fにある美術館、森アーツセンターギャラリーには、ロッカーが少ししかありません(自分が知る限り入り口に少しだけ)。大きな荷物を持ったままや、アウターを着込んだまま入ると大変な事になります。できれば、入館する前に荷物は預けておきましょう。

  • 六本木ヒルズ 森タワー 3F(小・中・大型 合計313台)
  • 六本木ヒルズ 森タワー 2F(小型 合計70台)
  • 料金:[3時間以内] 100円〜、[延長8時間ごと] 100円〜

六本木ヒルズ森タワー コインロッカー

六本木ヒルズ 森タワー52F


<最後にひとこと>
個人的に親しくさせて頂いている、現代の絵師。音楽業界、特にレゲエシーンで活躍するイラストレーターMURASAKIさんという方がいるのですが、今回の展示会を見ながら、ふとムラサキさんを思い出す場面が何度がありました。

「絵が緻密」「細かなところに仕掛けやストーリーが隠されている」「人間以外のもので人を表現。擬人化」「躍動感と色彩へのこだわり」など。

一見古く感じる浮世絵かもしれませんが、先に書いたとおり当時の江戸っ子になった気分で楽しんでみたり、現代のムラサキさんと重なって感じられたりで、終始ワクワクした気分で展示会を楽しんでいました。