下良果林著「文章を整える技術」。ライター・編集者向け、推敲の基礎が学べます

ライター・編集者向けの、ちょっと珍しいタイプの本があったのでご紹介します。下良 果林(しもら かな)さんという、プロのライター・編集者さんが書かれた「文章を整える技術 書いたあとのひと手間でぜんぜん違う」という本です。

書店へ行くと「文章術」を解説する本は、ズラリと並んでいますよね。でも、「推敲(すいこう)」に特化した本はあまり見かけません。「日本語表記ルールブック」という定番の薄い本がありますが、これは必要な個所を調べる辞書のように使う本です。また、新聞社の校閲部による文章のチェック術の解説本もありますが、文章スキルが高い人向けの内容になっています。

本書は、辞書タイプやプロ向けではなく教科書タイプ。初心者がイチから学べる内容になっています。しかも、すらすらと読みやすいつくりになっているので、途中で挫折したり、つまらなくなったりすることは無いでしょう。

  • ライターを始めたけど、自信を持って入稿できない
  • ウェブメディアや雑誌の編集担当になったけど、文章の良し悪しや、修正すべきポイントがわからない
  • ブログの文章に磨きを掛けたい

こういった方に、特におすすめしたい本です。

推敲とは、より良い文章にするための修正作業

本のご紹介をする前に、まず「推敲」について。

「あれ……昨日すごく良い文章が書けたと思ったのに、読み返してみたら、なんかイマイチ」

こんな経験ありませんか。

文章は、情熱を傾けて勢いで書くことは大事です。しかし、それで完成とせずに、一晩、もしくは数日寝かせて、改めて読み直してみるのです。

すると、まわりくどい表現や、文章のテンポの悪さなどに気づくことがあります。それを練り直し、修正することで、より良い文章にすることができます。

その作業を推敲と言います。

似た言葉に「校正」がありますが、これは誤字脱字をチェックする作業のことです。

文章が読みやすくなる! 推敲前の後の違い

本書「文章を整える技術 書いたあとのひと手間でぜんぜん違う」では、例文をあげて、修正すべきポイントを解説しています。

本書より引用しながら、2例ご紹介します。

【1】「てにをは」「主語・述語の関係」

まずは、本書前半に掲載されている例文。初心者向けです。どこに違和感を感じたか、またどう修正すべきかを考えてみてください。

■推敲前
“今回ご紹介する商品は、生産者さんに自家用に保存しているお茶。葉と茎を選別されず、ミックスになっています。実際に生産者さんを訪れたときに飲まれたのですが、葉と茎を選別していないためか香りがよく、味も濃厚。こんなに美味しいお茶があるのか! と非常に驚かされました。この絶品のお茶をお客様にもぜひ味わってもらいたい、と必死にお願いし、限定五十袋だけ分けました。他では下ろしていないので、ここでしかご購入されません。”

■推敲後
“今回ご紹介する商品は、生産者さんが自家用に保存しているお茶。葉と茎は選別されず、ミックスになっています。実際に茶どころの生産者さんを訪れたときに飲ませていただいたのですが、葉と茎を選別していないためか香りがよく、味も濃厚。こんなに美味しいお茶があるのか! と非常に驚きました。この絶品のお茶をお客様にもぜひ味わってもらいたい、と必死にお願いし、限定五十袋だけ分けていただきました。他では卸していないので、ここでしかご購入いただけません。”

■推敲のポイント
「てにをは」の誤り、主語と述語の関係、などを修正しています。

【2】表現をシャープに

次は、より高度な推敲です。「より短い言葉にできるか」を意識してみてください。

■推敲前
“会場のちょうど真ん中に、人工知能を搭載した人間型のロボットが置かれていました。その近くまで歩み寄ってみると「こんにちは!」という言葉を発するので、思わず「うわっ!」と大きな声を出してしまいました。”

■推敲後
“会場中央に、人工知能を搭載したヒト型ロボットが置かれていました。近くまで寄ってみると「こんにちは!」と言うので、思わず「うわっ!」と叫んでしまいました。”

■推敲のポイント
意味はそのままに、表現をシャープに。

推敲は、時間を置いてから行う

特に【2】に関しては、推敲前の文章自体に不具合はありません。しかし、改めて読み返してみると、もっとスッキリできるのではないかと思えます。

これは、文章を書いているときは、なかなか気づかないものです。

推敲する際は、一晩置いてから、もしくは数日後に行います。〆切があり余裕がない場合は、別の作業をしたり休憩したりして、一旦文章から離れてから見直すようにしましょう。そうしないと、なかなか気づかないのです。

推敲テクニックも満載!

本書は、例文をあげての実践だけでなく、推敲する上でのテクニックも多数掲載されています。

たとえば、「 」(かっこ)と『 』(鉤かっこ)の使い分けや、漢字を使うべきか、それともひらがなにすべきか、など。

すでにプロのライターとしてバリバリと執筆されている方にとっては、「そんなこと、言われなくてもわかっている」と思うかもしれません。しかし、始めの頃は悩んだのではないでしょうか。自分では「完璧だ!」思った原稿を、編集者に指摘・修正させられてハッと気づき、隠れて学んだ経験が……。

冒頭で「教科書」と紹介したとおり、本書は推敲をイチから解説してくれています。

僕は、あの頃にさかのぼって、自分自身にこの本をプレゼントしたい気分です。もちろん、今の僕の文章力もまだまだ未熟ですので、この本で学べたポイントはいくつもありました。

「推敲」に特化した本だからこそ、推敲を基礎からしっかりと学べるのです。

著者の「下良 果林さん」プロフィール
(Amazonより引用)

“早稲田大学社会科学部卒業。

大学在学中に女性月刊誌のフリー編集者として契約。雑誌編集の基礎を学ぶ。フリーライターを経て、株式会社ディーエイチシーに入社。自社通販サイトのWeb編集者として商品ページ、Webコラム、メールマガジンの執筆に携わる。メールマガジンでは、年始販促の企画がヒットし、当時最高額の売上を記録。1本あたり最大7,000万円以上の売上をたたき出す。

転職後、株式会社ローソンにてECショップの新規立ち上げ・運営担当を経て、LPや販促チラシ、メールマガジンの執筆を担当。年1,000本ペースでメルマガ執筆・校正をおこない売上に貢献。「引きつける」「売れる」「申込みが来る」文章力を確立する。

2015年7月に退職・独立。現在は、ライター・編集者として、大手企業へのインタビュー記事やLPの制作、メールマガジンやブログの執筆代行、書籍や冊子の編集などを手がけている。”